戦闘が激しさを増すウクライナ情勢の中、「人道回廊」が3月9日に実施されることになりました。
戦闘用語でまだ聞きなれない単語である「人道回廊」。
一体どういう意味で何なのでしょうか?
今回の記事では、
- 「人道回廊」の意味や読み方は?
- 「人道回廊」が設置される理由はなぜ?
- 「人道回路」の設置場所は?
- 「人道回廊」はいつまで設置される?
- 「人道回廊」の行き先はどこ?
- 「人道回廊」はワナ?
という内容でお届けいたします。
Contents
【人道回廊】意味や読み方は?
ロシアとウクライナの停戦協議のニュースで「人道回廊」という言葉を目にします。
「人道回廊」とは、
- 読み方:じんどうかいろう
- 英語:「humanitarian corridor」
- 意味:戦闘地域(戦争や紛争)に巻き込まれた民間人を避難させる経路のこと
のことで、要するに、
を設けること。
いわば民間人の脱出ルートのようなものですね。
ウィキペディアでも以下のように説明があります。
人道回廊(じんどうかいろう、英: Humanitarian corridor)とは、非武装地帯の一形態であり、人道的危機下にある地域へ人道援助をもたらす、あるいはこの地域から難民を避難させる、またあるいはその両方のための安全な通行を保証することを目的として設定される。こうした回廊は、飛行禁止空域や軍用車両の通行禁止地域と同時に設定されうる。
引用:Wikipedia
【人道回廊】なぜ設置する?
なぜ、人道回廊が設置されるかというと、そもそも「民間人」はそこに住んでいる人たちであり無害ですよね。
なので、今回のウクライナとロシア戦争の間では「民間人」を攻撃する必要はないわけです。
そのため、この「民間人」を戦地から避難させるためのルートを設置し、救助させることが目的として設置されます。
しかし、報道では、
という見方もあるようです。
ロシア軍は無差別攻撃を繰り返してウクライナのゼレンスキー政権への退陣圧力を強めている。各地での大都市占拠を前に外国人を脱出させ、国際的な批判を和らげる狙いとみられる。ウクライナメディアによるとゼレンスキー大統領は8日、「人道回廊は、ロシアが市民を救っているように見せるための政治宣伝だ」と批判した。引用:東京新聞
【人道回廊】一時停戦する理由は?
人道回廊の設置により、
●ウクライナとロシアの間で人道回廊が設置されることで一時停戦する。
●両国の民間人が避難する間は一時停戦とする。
といった言葉がニュースで出てきています。
人道回廊の設置をすることで、なぜ一時停戦になるのでしょうか?
民間人は戦地のど真ん中や、避難できない場所にいることが多いのが現状。
そのため、人道回廊を設置するとしたならば、そこに流れ弾やミサイルが飛んでくるということはあってはならないのです。
そのため、
ということですね。
ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は「回廊がつくられれば、その周辺では一時的に戦闘が止まる可能性がある」と語った。(中略)
特定の道路や地区を「安全地帯」と設定し、そこでは双方が攻撃を控えるというやり方が多い。
また、戦争中に民間人はケガや飢餓、不衛生による病等、健康を害している可能性が十分に考えられます。
そのため、民間人を避難させる前後に治療行為が必要になります。
ただ、人数が多いと野戦病院のような形で処置をしないといけません。
その場合はどうしても時間がかかります。
その間に戦争がまた始まったら人道回廊の設置は意味がありません。
だからこそ、
にも一時停戦が一定の期間が必要とも考えられています。
一時停戦の期間はいつまで?
一時停戦の期間がいつまでかは決まっていません。
ただ、今までの戦争の中では人道回廊の設置から避難と医療行為までをセットにしているように思います。
人道回廊とは民間人の脱出であり、目的は民間人を生かすことにあります。
そのため、避難する人が亡くなってしまっては意味がありません。
そのため、民間人が全員安全に人道回廊を通じて非難し終えるまでは停戦となるのではないでしょうか。
【人道回路】設置されるまでの経緯
人道回廊は基本的に、両国の合意があって設置されるものとなっています。
今回で言うと、ロシアとウクライナの両国ですね。
2022年3月9日に「人道回廊」が設置されることが決まりましたが、以下の経緯で決定に至ったようです。
①2022年3月3日:ロシアとウクライナの第一回交渉
- ロシアとウクライナの両者が「人道回廊」の創設に合意。
②2022年3月4日:ロシアとウクライナの第二回交渉
- 交渉では市民が避難するための「人道回廊」の設置と、戦闘が激しい地域に医薬品や食料を届けることで一致。
- 一方、即時停戦という合意は得られなかった。
③2022年3月7日:ロシアとウクライナの第三回交渉
- 「人道回路」と「停戦」の合意。
- ムイと南東部マリウポリに人道回廊を設置。
- 人道回廊の実現は初めて。
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今回のように当事者間の直接交渉で合意に至る例も、国連が仲介して実現する例もあるようです。
人道回路だけが合意されても、同時に停戦もセットで合意されないと結局意味がないものになってしまいますので、今回の人道回路の設置は意味があるものと言えるでしょう。
【人道回廊】設置場所はどこ?
ロシア国防省は首都キエフのほか、北東部のハリコフやスムイなど5つの都市で戦闘を停止。
2022年3月8日に「人道回廊」が初めて行われました。
報道の様に、市民など5,000人がバスなどで避難したという事です。
現時点で「人道回廊」が実施されているのは、以下の4都市です。
- ウクライナの首都キエフ
- 東部ハリコフ
- マリウポリ
- 北東部スムイ
ロシア国防省によると、既にスムイから外国籍の723人、ヘルソン州で外国籍の223人を避難させたとしています。
インド、中国、トルコからの留学生が多く、退避作業は続行中だとのこと。
ただ、マリウポリでは5、6日も回廊が設置されたが、停戦が順守されず、両日とも退避は延期されているようです。
【人道回廊】行き先はどこ?
人道回廊を通じて民間人はどこにたどり着くのでしょうか?
上記で説明した様に、人道回廊は4ルートありますが、
となっています。
しかし、ウクライナ側がその行き先をめぐって反発。
理由は、
- 行き先がロシアやベラルーシで事実上の人質となる危険性がある
- 用意された道路に「地雷が設置されていた」という証言も浮上
- ロシアのプロガンダに使われる可能性
を示唆している為です。
「市民の皆さんは命からがら避難しますので、気づけば自分の意思とは異なる場所に連れて行かれて、そのあげくに、『大勢の市民が希望してロシアに逃げてきた』というロシアのプロパガンダに使われる可能性もあります。そのためウクライナの地元当局は『これはロシアによる挑発行為だ』と言っています」
引用:日テレNEWS
ウクライナ側とすると、「ロシアを信用するな」と警鐘を鳴らしているわけですね。
ウクライナがロシアを信用しない理由については、過去の出来事も関係しているようです。
【人道回廊】地雷設置はロシアのワナ?
民間人を救助できるなら、人道回路は救命策のように思えますよね。
しかし、人道回路が逆に危険だと捉える見解もあるようです。
- シリアの例
- 地雷設置
- 人質になる可能性
順番に説明していきます。
理由①シリアの例
「人道回廊」の設置が提案されるのは、これが初めてではありません。
6年前のシリア内戦にも、実際に人道回廊が設置されています。
そのシリア内戦で、実は、ロシアは残虐非道な〝前科〟があったといわれています。
「6年前に同じことがありました。激戦が続いていたシリアのアレッポでは、ロシアはシリアの政権軍と一緒になって街を攻撃していました。市民が大勢取り残されていたので、ロシアは期限を決めて一時停戦し、その間に市民を避難させると宣言しました」 「ところが期限が過ぎると激しい空爆を行い、街を一気に制圧していきました。逃げられなかった市民が大勢犠牲になりました。『市民を避難させる措置は取ったのだから、人道的には配慮した』という言い訳ができてしまいます」
引用:日テレNEWS
こうした背景が、今回のウクライナ戦でも同じことがあるのではないかと危惧されているのです。
人道回路による停戦期間が終われば、『市民には逃げろと言ったので、街に残っているのは戦闘員だけ』という口実で総攻撃に出るというロシアの心配があるということですね。
理由②地雷設置
「人道回廊に地雷」という信じがたい報道があります。
英BBCは7日、赤十字国際委員会(ICRC)の職員が、合意されたルートでマリウポリから脱出しようとしたところ、「道路には地雷が設置されていた」という証言を報じています。
避難民を狙ったかのようなロシア軍の卑劣な攻撃も確認された。
理由③人質になる
ロシアによると、キエフからの避難者はベラルーシに到着後、空路でロシアに運ばれるほか、ハリコフからの避難者もロシア西部ベルゴロドまで避難させるとのこと。
これでは、まるで「人質」扱いではないかという声が上がっているようです。
当然のことだが、ウクライナ側はこの方針に反発しており、大統領府報道官は「市民は(ウクライナ)国内に避難する権利を有するべきだ」と非難ているとロイター通信が報じた。